ぼくがカルテをつける数え切れない理由

      2017/03/13

お客様に毎回満足して頂き、さらに自分自身をレベルアップさせ続ける方法として、数年前からカルテについて真剣に考えています。

それぞれのお客様にあった技術を最適化することが第一目的ではありますが、それ以外にも様々な効果が得られると自負しています。

ちなみにカルテとは、お医者さんが患者さんの病状や処方箋をドイツ語等で記入しておく、あのカルテです。しかし僕はドイツ語ができないので拙い日本語で頑張って記入しております。

今回は、ぼくがお客様を切り、そしてカルテをつけることについて論じてゆきたいと思っております。

 

自分に満足しないように、、、。

日々お客様のヘアースタイルを創っていると、「よし!完璧!これで絶対満足してもらえる!」と自信満々に思えることよりも、「あそこはもうちょっとこうして、ああすればよかったかな、、、。」と感じることが圧倒的に多いです。

これは何も、「不満足な状態で仕上げている。」というわけではなく、“質感の維持”“仕上がり時間”等でもっともっと出来るはずだったという、いわば “自分へのエール”です。むしろ、「毎回、完璧!」状態にぼくがなれることは今後ないと思います。現状よりもさらに上を目指し続ける上では「完璧だ!」と思ってしまうことは成長への妨げになると感じるからです。

もちろん、「うまくできたー!!!っシャー!!!」と感じることもありますが、自己満足である可能性も大いに含むので、あまりはしゃがないようにしています笑

 

カルテをつけるとき

経験を糧として、より満足してもらえるようにサロンワークに落とし込みレベルアップに努めることが、美容師として健全な姿であると考えます。

お客様を仕上げ、ぼくは毎回いろんなことを感じます。具体的に挙げてみると、

  • 「カットはあの部分から先に切って、質感をコントロールしてからアウトラインを整えた方が、手触り的にも満足してもらえたかもしれない。」
  • 「Aの薬で5分スチーミングした後に、Bの薬ではなくAの薬を再塗布して2分の方が、時間と髪に負担をかけずに仕上げられたかもしれない。」

みたいな感じです。お客様のヘアースタイルの結果に対する、ぼくの主観的な感想です。ブレーンストーミングですね。

このような主観的感想をカルテに記し、その日のサロンワークを再度見直します。お客様にさせていただいた施術内容やその他諸々(興奮してお話なさっていたことなど笑)をなるべく細かく記録しておきます。

興奮してお話ししていたことも、この様に臨場感を踏まえて書き記しておきます。

 

自信を持って最善の方法を試みる。

カットには、もちろん技術理論ケースバイソリューションスキルが必要で、カラーやパーマには、薬剤を深く理解することと、お客様の現在の髪の状態の見極める判断力触診力が必須です。

上記能力は当たり前に備えた上で、カウンセリングをし最善と考えうる方法と順番で施術します。

しかし、お帰りになった後には「もっとああすればよかった、、、かも。」みたいな主観的感想がどんどん溢れ出します。

しかしこれは、後悔ではありません。

「もっともっとできたはず!」という過剰なまでの自信です笑 しかし過剰ではないにしても、自信を持って幾千も存在するカット方法から使用できそうないくつかの方法論を引っ張り出し、髪を梳き 、ハサミを開閉します。自信を持ってカットするのです。

 

カルテの有用性

これに対するぼくの解決策は、カルテです。

なぜ解決策になるかというと、前回の施術内容を記したぼくの主観的感想が、今回ご来店時に改めて見返すと、主観的感想ではなく、客観的見地からの結果として目の前に提示されるからです。

お客様ごとに髪の毛系統の情報は細かく観察すると全て異なり、また同じお客様であっても毎回同じコンデションのヘアーであるわけでももちろんないので、同じやり方で同じ結果を毎回提供する、というのは現実的に限界がありますなので、「こうすればこうなる、がこのような状態の時にはこうならない。」みたいな情報をカルテに限りなく多く持っていることが、再現性の高く上質のヘアースタイルを創るうえで非常に有利であり、良い美容師であり続ける一つの指針であると思います。

具体的なカルテ有用性を挙げます。

  • 「今回こうゆう切り方をしてこうなった。結果乾かすだけでシルエットがまとまる仕上がりになった。」等のポジティブな記録は、次回同じお客様を切る時にも良いガイドになります。そのお客様の髪を知ることが、そのままお客様を知ることとなるのです。
  • 「今回このような状態の髪にCのカラー剤を使用したら、狙いよりも少し暗くなった。満足はしてくれていたが、Dのカラー剤を20%配合すればより良い結果になったかもしれない。」といった改善を即す記録であれば、次回のオーダー時に同色希望に対応できることはもちろん、同じような髪質の別のお客様にも対応できる情報となり、非常に有益な情報となります。これは自分への大きな財産にもなります。

これにより、同じお客様に前回とは違ったやり方で、前回と同じ系統、同じ質感のスタイルを提供することが可能になるのです。また、スタイルチェンジを求められた時にでも、カルテを見返し、施術履歴を鑑みることにより、柔軟に対応することも可能になります。カルテは未来への自分へのメッセージです。

ぼくのカルテの一例です。最近は様々な機能を有した、スマートフォンアプリでカルテをつけています。

 

本当の意味での経験

この糧とも財産とも言える情報が、本当の意味での経験であるとぼくは考えます。お客様と接し、その記録が詰まったカルテこそがぼくの成長の記録です。

この本当の意味での経験がある美容師さんは、お客様に寄り添える美容師であると思います。これはぼくの理想の美容師像の一つです。寄り添えるとは“声を聞ける人”。つまり「悩みを解決し、願いを叶えてあげられる。」ということです。

ここで一つ、紛れもない事実を言いますが、ヘアースタイルを創るにあたり、「お客様の望むヘアースタイル」を創るより「お客様に似合うヘアースタイル」を創る方が圧倒的に簡単です。なぜならば、前者は髪質等の問題上「不可能」である可能性が存在します。そしてその希望スタイルが似合わない可能性も存在し、似合わないヘアースタイルはどれだけ綺麗に創られていても、綺麗に見えません。

 

寄り添い希望を叶えたい。

しかし、だからと言って「無理ですね。」ではなんだか悲しくありませんか?

「無理だから無理。」と突き放すことは簡単ですが(簡単ではないです、、、。)、なんとかお客様の希望を汲み取り悩みを解決しながらも、似合うヘアースタイルに寄せながら創り上げ、お客様に満足していただけることがぼくは大事なことだと思います。

寄り添わず、「あなたはこれが似合うからこうしてあげたわ。ほら!どう?」よりも、「あなたはこうなりたかっんですよね?難しかったんですけど、こんなに似合うスタイルになりましたね!」の方がカッコよくないですか笑?今のぼくは後者の方が好みなので、これからも日記をつけるようにカルテをつけていきたいと思っています。

経験は活かさなくては経験ではないと思います。これがぼくがカルテをつけ続ける理由です。満足することなく、お客様に満足し続けてもらえる様に努めて行きたいです。

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