美容師の” 美 “と、お客様の” 美 “。 vol.2
2017/03/13
綺麗になりたい。女性はもちろん、男性の方でも綺麗なヘアスタイルでありたいと思うことは当然です。そして、髪の毛も清潔でありたいと思うはずです。
その気持ちは、美容師のぼくも全く同じです。
その同じ思いの奥に、人それぞれの大事にしたい部分がある。そこまで汲み取れる美容師でありたいと、ぼくは考えています。
※前回のお話→ ” 美容師の” 美 “と、お客様の” 美 “。 vol.1 “
失敗された経験、した経験
美容室に行って失敗した経験はありますか?多分皆様、少なからず、「うーん、、、。」みたいな思いをしたことがあるかと思います。申し訳ありません。
そして、これはプロとして恥ずべき発言にとられるかとは思いますが、ぼくも失敗をしたことがあります。美容師になり14,5年にもなると、そのような経験は美容師であれば皆、必ずしているかと思います。
勘違いを解くために一応説明させていただきますが、ぼくが経験した失敗とは「髪を爆発させてしまった。」や、「流血カットをしてしまった。」等のコンプライアンス的にマズいものではありません。そのようなレベルの事態は失敗ではなく、失格です。当然美容の仕事を行う上での最低限の安全性を理解し、教育されない限り、お客様に触れることは許されません。
ぼくが失敗したこととは、皆様と同じです。つまり「うーん、、。」とお客様が感じたのならば、ぼくも「うーん、、、。」となりますし、むしろそれ以上に「もっとこうすればよかった、、、。」と強く感じます。
しかし「もっとこうすれry」などと思っても、時計の針は戻ってはくれません。お客様の感じた ” 満足できない気持ち “が、ぼくにとっての、失敗なのです。
切り落とされた毛は元に戻らない
しかし悲しいかな、切られた毛は重力に従順に床へひらひらと落下し、「あ、やっぱりこの感じで切りたかった!」と思っても、後の祭り。ひらひら舞う毛束をダッシュで回収しても、現在の科学ではその切り落とされた毛束を頭毛に自然にくっつけ直す超絶技巧などは未だに発明されておりません。
つまり、一旦引き返して、再度チャレンジ。なんてことは絶対に不可能なのです。もちろんカラーもパーマも一緒です。(カラーやパーマはある程度やり直すことは可能ですが、繰り返しの技術による髪へのダメージ程、お客様にとって無駄なものはありません。)
美容師としてお客様に喜んでもらえるプロとして振る舞う以上、この「元に戻らない」と言う覆せない事象とは真剣に向き合い、うまく付き合って行かなくてはなりません。言うまでもなく、お客様の髪の毛だからです。切ってる美容師の髪の毛なぞではありません。
ここを深く真剣に捉えていない美容師には、失敗が多いと思います。
お客様の美を知る
では、どうするか?前回のエントリで、”お客様の美”について少し触れましたが、当然お客様にもいろんな方がいらっしゃいます。
髪質、つまり「傷ませたくない、綺麗な髪になりたい。」という方はもちろん、ヘアースタイル、“視覚的な美”を第一優先される方もいらっしゃいます。どちらも素晴らしい願望で、当然ぼくはこの二つの願望は最低限達成してあげなくてはなりません。
しかし、この二つの願望。真の意味で両立させることは、正直、限界があります。“ヘアスタイルの構造”、“毛髪科学の知識”、そして “お客様の髪質や骨格等” を総合的に鑑みて、一つのスタイルに着地させなくてはならず、「すべてのパラメータが100」という状況は、深く真剣に研究すればするほど、難易度の高いものであると感じます。これは美容師サイドの見解です。理想はもちろん、「すべてのパラメータが100」ですが。
まあ、だから終わりがなく、研究を重ね続けないと高みを提供できない仕事なので、楽しさの領域でもあります。
すべてのパラメータが、、、。
カットをうまくするために
さて、話は少しそれますが、美容師はトレーニングの際に、”ウィッグ”というものを用います。髪の毛の生えたマネキンです。皆様も目に触れた機会があるかもしれませんね。そうです、あの不気味なやつです。これを何千体も切り込み、基本的なカット理論と技術を身につけ、各美容室の偉そうな人に認められ、初めてお客様の髪の毛をカットすることができます。
このウィッグ。一体安くても3000円程度します。だいたい安いウィッグでも肩下くらいまでの毛の長さがあるので、コスパよくトレーニングするのであれば、セミロング〜レイヤー〜ボブ〜ショート〜ベリーショート〜刈り上げ。と、一通り効率よく練習が可能です。しかし、このウィッグのトレーニングでどれだけ几帳面に正確に切れるようになっても、お客様の髪の毛を几帳面に正確に切ることはできません。
何故なら、お客様の髪の毛は、“太さ”、“量”、“癖の状態”、“生えている領域”、“方向”、“骨格の形”。この全てが異なるからです。ちなみにウィッグはだいたい同じです。この異なる素材に対して、同じ技法で対処することは限界があります。各お客様が持っている素材に対して、ベストな技法をセレクトして使い分ける。
これができる美容師に、失敗はほとんどありません。
あの不気味なやつ
美容師は技術職?
よく美容師は「技術職」だと思われていますが、ぼくは半分はそうは思いません。「技術」はできて当たり前、プロである以上、技術力の向上には常に勤しみ続けるべきです。しかしこれだけでは、前述の異なる素材に対して満足な結果を提供し続けることは不可能です。
「技術」+「コンサルテーション力」が求められていると思っています。
つまり、様々なケースを深く理解し、要求、要望を叶えるための解決策を、どのような手法でどのように導くかを提示する力です。
やはりこのコンサルテーション力はただウィッグを切りまくっているだけでは、全く身につきません。更には、カット教本、カット動画、セミナー等でも得られるものはごくわずかだと感じています。ぼくもカットのトレーニングが好きだったので、当然ウィッグも切りまくったし、いろんな教本やセミナーにも足を運びました。そこで得られるものは「正しい開閉方法」「カットスピード」「スタイル構成知識」などなど、技術領域では非常に素晴らしく必要なものばかりでしたが、コンサルテーション力の向上にはあまり関係がありません。
この力を身につけるには、一つしかありません。「お客様の声を聞くこと」です。
まーた長くなりすぎてしまいました。すみません、、、。次回に続きます。
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この記事を書いた人
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南青山ヘアーサロン muguet ディレクター
今村 祥平(イマムラ ショウヘイ)
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